若さしか取り柄がない!

若さしか取り柄がない女子大生が、語ったりスベったりするブログ

留学生活最大の危機の話

昨年の8月末に留学に来てからというもの、順調に単位を落としつつ、それなりに平和な暮らしを送ってきた。日本にいたころは実家暮らしだったので、留学が初めての一人暮らしとなったが、餓死などすることもなく、いたって平和な日々である。

しかし、そんな私の平穏な生活も、時には乱されることがあった。今回は、その中でも留学生活最大のピンチに陥った時のことを振り返りたい。

 

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時は先月のある日、夕方ごろである。寮に遊びに来ていた友人を下まで送り、部屋に戻った私はある異変に気が付いた。

 

トイレのドアが開かない。

 

まさか、そんなことがあっていいのか?友達がどこか触ったのだろうか?一瞬にして頭を杉下右京モードに切り替えつつ、私はドアノブを捻ったり殴ったり舐めたりしてみたが、一向に開く気配がない。結局10分ほど格闘したが、すっかり閉じてしまった奴の心を動かすことはできなかった。

とはいえ、その時点での私はあまり焦ってはいなかった。私の住む寮は校舎のすぐそばにあるので、こう思っていたのだ。

 

いざとなったら、校舎のトイレを借りればいいや。

 

そう気楽に構えていた私は、買い物に行くなどして、いつも通りの夕方を過ごしていた。

 

ところで、私の部屋のトイレはシャワーともつながっていて、トイレに入れないということはつまりシャワーも浴びられないことになる。さすがにシャワーは校舎にないので、とりあえず友達に事情を話し、貸してほしいと頼む。親切な友達が申し出てくれたので、21時半ごろ彼女の部屋へと向かった。会話が盛り上がったこともあり、シャワーを浴びて彼女の部屋から出たころには、既に23時をまわっていた。

 

さて、部屋に戻った私は、シャワーを浴びられたことですっかり気が抜けていた。あとやることは、夜更かしをして寝るだけだ。明日、寮のスタッフにドアのことを報告しよう。そう考えた私はいつも通り紅茶を入れ、音楽を聴きながらパソコンの前に座り、夜のネットサーフィンを楽しんでいた。

 

さて、そろそろ寝ようかと思ったのは午前2時ごろである。寝る前にトイレに行っておくか。そう思って、私は深夜の誰もいない校舎へと向かった。

しかし、悲劇はここから始まる。

 

校舎の入り口に、鍵がかかっている。

 

想定外の事態である。押しても引いても、堅牢な鍵は開きそうにない。部屋からの道程で、鍵が入っていると思しき宝箱を見た覚えもない。しかし考えてみれば、夜間校舎に鍵がかかるのは当然だ。それを全く考えていなかったことを、私は深く後悔した。

 

どうしよう。校舎の鍵は、中にあるコンビニが開く朝7時までは到底開かないだろう。それとも、ダメもとで別の棟に行ってみるか?私はドアの前で、深夜の頭脳をフル回転していた。

 

さて、古来より、悲劇は重なるものであるらしい。泣きっ面に蜂とか、踏んだり蹴ったりのような言葉が長く残っているのも、その証なのだろう。びくともしないドアの前で佇んでいた私も、ほんの数分後、先人の言葉の重みを身に染みて知ることとなる。

 

まずい。さっき飲んだ紅茶が効いてきた…!!

 

紅茶といえば、その利尿作用は世界中で知られるところだ。私でさえ、その効果についてはよく知っていた。しかし日ごろ、トイレがすぐそばにある環境に慣れすぎたせいで、私は平気で就寝前に何杯もの紅茶を飲む人間へと退化していたのである。トイレに行けないだけでこうも平穏がかき乱されるとは、人間はなんと脆い生き物だろうか。

 

そんなことを考えている間にも、私の膀胱は確実に限界へと近づいていた。そして膀胱の軋みに伴うように、私の脳もここ近年最高の速度で回転していた。

 

こうなったらもう野ションか?深夜だし、さすがに誰も通らないだろう。

でもマーフィの法則というのがあって、絶対に人に会いたくない時に限って知り合いに会ったりするものだ。野ション姿を見られるなんて、女、ひいては人類としての尊厳に関わる。

誰かにトイレ借りるか?でも午前2時だ、連絡しても気づいてもらえる可能性はゼロに近い。

部屋に帰って、何かの容器にする?でもペットボトルとかないし、ビニール袋にしても、床に置いたらどうなるか分からない。しかも失敗したら悲惨だし、あまりにリスクが高すぎる。

 

そして私の脳は、一つの答えを弾き出した。

 

もう一度、トイレのドアを開けてみよう。

  

私は尿意を全身全霊で引っ込め、風のように部屋へと駆け戻った。トイレのドアは相変わらずの不機嫌ぶりだ。しかし、今度の私はやすやすと引き上げるわけにはいかない。どんなことがあっても諦めるものか、必ずドアを開けてみせる。それに、全力で戦った事実があれば、たとえ敗北しても後悔はない…。

そう心に決め、私は「ドアを開ける方法」と検索欄に打ち込んだ。戦いのゴングは、今鳴ったのである。

 ↓ここからのBGM

めざせポケモンマスター

めざせポケモンマスター

 

まずは、カードを使ってこじ開ける方法を試してみる。しかし、ラッチの形に合わないようでびくともしない。10分ほどの戦いののち、私は叫んだ。

 

「もういい!クレジットカード、戻れ!」

 

しかしここで負けるわけにはいかない。へとへとになったクレジットカードに代わり私が投入したのは、エレキベースの修理道具たちである。まずはマイナスドライバーを持ち出し、ノブの真ん中の穴に差し込んでみる。カチャカチャと回してみるが、相変わらずの膠着状態だ。しかしその間にも、私のBP(膀胱ポイント)は確実に0に近づいていく。私は再び叫んだ。

 

「もういい!マイナスドライバー、戻れ!」

 

これで開かなかったら、もう後悔はない。そう覚悟を決め、最後の望みを託して取り出したのは、修理セットに入っているけど用途不明の針金であった。マイナスドライバーと同じように、ノブに差し込んでかき回してみる。頼む、開いてくれ…!

 

 

奇跡の福音が聞こえたのは、それからほんの数分後のことであった。

 

カチャリ。

 

 

残りBP、わずか1。約9時間ぶりに見るトイレの中には、溢れんばかりの光が満ちていた。

 

 

さて、かくして戦いは無事勝利に終わり、私は留学生活最大の危機を切り抜けたのであった。しかし、あのときもし誤った選択をしていたらと思うと、身の毛もよだつ思いだ。

私の命を救ったあのちゃちな針金は現在、針金大明神として黄金の祭壇に祀られている。